インドネシア原産の樹木「メリンジョ」種子抽出物の健康増進や肥満?糖尿病改善作用のメカニズムを解明
【ポイント】
- メリンジョ種子抽出物が、善玉物質であるアディポネクチンを活性化するメカニズムを解明し、その効果にDsbA-Lという遺伝子の型の違いが関与することを見出しました。
- メリンジョ種子抽出物は、経口摂取することにより、ヒト及びマウスにおいてもアディポネクチンを活性化し、特にマウスにおいては肥満?糖尿病病態を改善することも明らかにしました。
- 今回の発見をきっかけに、メリンジョ種子抽出物に注目した健康増進や肥満?糖尿病治療への応用が期待されます。
【概要】
熊本大学大学院生命科学研究部(薬学系)薬物治療学研究室の鬼木健太郎助教及び遺伝子機能応用学研究室の首藤剛准教授らは、インドネシア原産の樹木である「メリンジョ」の種子の抽出物が、生体内でDsbA-L (Disulfide-bond-A oxidoreductase-like protein) 遺伝子を誘導し、脂肪細胞から出る善玉物質の一つ、アディポネクチンの活性化を促進するメカニズムを解明しました。
メリンジョは、インドネシア等の国々で、古くから食されている安全性の高い天然物であり、その種子に含まれるポリフェノール類「レスベラトロール」の一種である「グネチンC」という成分に近年注目が集まっています。
一方で、アディポネクチンは、脂肪細胞から分泌される生理活性物質の一種で、その健康増進作用が注目され、特に、肥満や糖尿病を防ぐ作用があることで知られています。
鬼木助教らは、メリンジョ種子抽出物がヒトのDsbA-L遺伝子の働きを高め、アディポネクチンの活性化に作用することを臨床研究で解明しました。さらに首藤准教授らは、マウスを使った動物実験でも同様に、メリンジョ種子抽出物がDsbA-L遺伝子の働きを高め、アディポネクチンを活性化させることを証明し、肥満?糖尿病病態を改善することを明らかにしました。今後、メリンジョ種子抽出物によるDsbA-L遺伝子の誘導促進作用に注目することで、人々の健康増進や肥満?糖尿病治療への応用が期待されます。本研究の成果は、Nature Researchの「Scientific Reports」に令和2年3月9日午前10時(英国時間)に公開されました。
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【論文名】?
Melinjo seed extract increases adiponectin multimerization in physiological and pathological conditions
【著者名?所属】
Kentaro Oniki*, Taisei Kawakami, Azusa Nakashima, Keishi Miyata, Takehisa Watanabe, Haruka Fujikawa, Ryunosuke Nakashima, Aoi Nasu,Yuka Eto, Noriki Takahashi, Hirofumi Nohara, Mary Ann Suico, Shunsuke Kotani, Yui Obata, Yuki Sakamoto, Yuri Seguchi, Junji Saruwatari, Tadashi Imafuku, Hiroshi Watanabe, Toru Maruyama, Hirofumi Kai, Tsuyoshi Shuto (*責任著者)
【掲載雑誌】 Scientific Reports
【doi】 10.1038/s41598-020-61148-2
【詳細】 プレスリリース本文 (PDF 753KB)
お問い合わせ??熊本大学大学院生命科学研究部附属
グローバル天然物科学研究センター
大学院薬学教育部 遺伝子機能応用学研究室
担当:首藤剛 (准教授)
電話: 096-371-4407?
e-mail: tshuto※gpo.kumamoto-u.ac.jp
(※を@に置き換えてください)