抹茶が不安を軽減するメカニズムの一端を解明
【ポイント】
- 抹茶を飲ませたマウスの不安様行動が軽減されることを、高架式十字迷路試験※1によって明らかにした。
- 抹茶の80%エタノール抽出物に強い抗不安活性が認められた。
- 抹茶の抗不安効果に、ドパミンD1受容体およびセロトニン5-HT1A受容体の活性化が関わることを明らかにした。
- 抹茶(Matcha)を世界に伝承することで、日常生活から健康を増進する新しいライフスタイルの提案が期待できる。
【概要説明】
熊本大学 大学院生命科学研究部 薬物活性学分野の倉内祐樹助教、香月博志教授らのグループは、抹茶に不安を軽減させる効果があることを明らかにしました。現在、抹茶(Matcha)は世界中で嗜好品として親しまれていますが、日本では古くは医薬品として扱われていた歴史があります。そのため、抹茶には様々な有益作用が期待されていますが、その科学的根拠は十分ではありません。研究グループは、実験動物の不安様行動を評価する高架式十字迷路試験により、抹茶および抹茶抽出物を摂取させたマウスの不安様行動が軽減されることを見出し、この効果に不安様行動と関連の深いドパミンD1受容体およびセロトニン5-HT1A受容体の活性化を介した機序が関与することを明らかにしました。日本の文化や生活に根付いた抹茶(Matcha)を世界に伝承することで、日常生活から健康を増進できるライフスタイルの提案につながることが期待されます。
本研究は、文部科学省科学研究費補助金、博士課程教育リーディングプログラム(HIGOプログラム)の支援を受けており、研究成果は、Journal of Functional Foods誌のオンライン版に2019年6月6日(日本時間)に掲載されました。
〈用語解説〉
※1. 高架式十字迷路試験(こうかしきじゅうじめいろしけん)
抗不安薬のスクリーニングや、実験動物の不安関連行動を評価する行動試験。
※2. 棚式覆下栽培(たなしきおおいしたさいばい)
新芽が伸び始める4?5月にかけて25日以上の期間、茶園に遮光棚を設け、黒い寒冷紗(かんれいしゃ)で覆いをして栽培する方法。独特の鮮緑色および芳香のある茶葉を栽培できる。
※3. 行動薬理学的解析(こうどうやくりがくてきかいせき)
実験動物などの行動に対する薬物の作用を研究する学問を行動薬理学という。
【論文情報】
論文名:
Anxiolytic activities of Matcha tea powder, extracts, and fractions in mice: Contribution of dopamine D1 receptor- and serotonin 5-HT1A receptor-mediated mechanisms
著者: Yuki Kurauchi, Hari Prasad Devkota, Kengo Hori, Yuiko Nishihara, Akinori Hisatsune, Takahiro Seki, Hiroshi Katsuki
掲載誌:Journal of Functional Foods
doi:10.1016/j.jff.2019.05.046
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1756464619303093
【詳細】
プレスリリース本文(PDF1052KB)
熊本大学大学院生命科学研究部
薬物活性学分野
担当:助教 倉内 祐樹
TEL:096-371-4185
E-mail:kurauchy※kumamoto-u.ac.jp
(迷惑メール対策のため@を※に置き換えております)