電解反応途中のプロトン濃度の可視化に成功-プロトン伝導機構の解明に期待-

【ポイント】

  • チタンニオブ酸化物ナノシート(TiNbO5-)と希土類イオン(Eu3+,Tb3+)とが互いに積層した構造体に関し,プロトン濃度(水素イオン濃度)に応じて緑色~黄色~赤色に発光することを明らかにしました。
  • 希土類イオン/酸化チタンニオブナノシート発光体は,反応途中におけるプロトン濃度の変化をリアルタイムに可視化します
  • カーボンニュートラル社会の実現に不可欠な水電解セルや水素燃料電池内におけるプロトン伝導メカニズムの解明につながる技術として期待されます。

【概要説明】

 熊本大学産業ナノマテリアル研究所の伊田進太郎教授と粟屋恵介特任助教らの研究グループは,厚さが約1 nmのチタンニオブ酸化物ナノシート(TiNbO5-)と希土類イオン(Eu3+,Tb3+)からなる混合体(以下、TiNbO5-ナノシート/Eu3+,Tb3+混合体)について,紫外線照射下の発光色が溶液中のプロトン濃度(水素イオン濃度)に応じて変化することを明らかにしました。TiNbO5-ナノシート/Eu3+,Tb3+混合体は,プロトン濃度が低い環境では緑色,高い環境では赤色,中間では黄色に発光するため,化学反応中のプロトン濃度を目視でリアルタイムに知ることができます。研究グループは,TiNbO5-ナノシート/Eu3+,Tb3+混合体をゲル電解質として使用し,水の電解反応に伴うプロトン濃度の変化を可視化することに成功しました。同発光体は,水素燃料電池内部におけるプロトン伝導メカニズムの調査に応用できる可能性があり,将来的なカーボンニュートラル社会の実現に向けた新材料として期待されます。本研究成果は令和4年10月31日に英国王立化学会の科学雑誌「Nanoscale」にweb掲載されました。

?【今後の展開】

  本研究にて開発したプロトン濃度の可視化技術を用いることにより,無機ナノ材料中のプロトン伝導メカニズムの解明が進み、水電解セルや水素燃料電池開発を支える優れたプロトン伝導膜の開発につながることを期待します。


【論文情報】

論文名:Multicolor luminescent material based on interaction between TiNbO5? nanosheets and lanthanide ions for visualization of pH change in inorganic gel electrolyte
著者:Keisuke Awaya, Kei-ichiro Iso, Shintaro Ida* ?
掲載誌:Nanoscale
doi:10.1039/D2NR03806D
URL:https://doi.org/10.1039/D2NR03806D

【詳細】 プレスリリース(PDF294KB)



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<熊本大学SDGs宣言>

お問い合わせ
熊本大学産業ナノマテリアル研究所
担当:伊田 進太郎 教授
電話:096-342-3659
E-mail:ida-s※kumamoto-u.ac.jp

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