細胞分裂の際に染色体を均等に分ける新たなしくみを解明!~無意味と思われていた非翻訳性RNAの配列に新機能発見
細胞が分裂する際には、染色体を均等に娘細胞に分配する必要があります。そのような染色体の均等分配は、遺伝情報を次世代に正確に伝えていく上で大変重要で、分配に異常があると、例えばダウン症や、がん等の原因となります。
染色体を均等に分けるためには、まず糸状の装置である紡錘糸が、染色体の特定の領域(セントロメア領域)に結合することが必要です。紡錘糸が正しく結合するには、染色体の一部が「ヘテロクロマチン」と呼ばれる特殊な構造をとることが必要不可欠ですが、その構造を形成するしくみは充分には明らかにされていませんでした。
今回、熊本大学大学院先端科学研究部(理学系)生物科学分野の谷時雄教授、牟田園正敏大学院生らのグループは、大阪大学及び基礎生物学研究所のグループとの共同研究により、分裂酵母を用いて、セントロメア領域から合成される遺伝情報伝達物質であるRNAに含まれる「イントロン」と呼ばれる配列が、ヘテロクロマチン構造形成を促進することを初めて明らかにしました。
このイントロンと呼ばれる配列は、通常、遺伝子が働く際にはRNAから切り除かれます。そのため特に意味が無い配列と思われてきましたが、今回の発見は、イントロンが、むしろ染色体分離という生物にとって極めて大切なポイントで重要な機能を持つことを初めて明らかにしました。このことは、ダウン症候群など染色体数の異常に起因する疾患の発生機構解明にも繋がるものとしても期待されます。
本研究の成果は、米国科学雑誌 PLOS Geneticsで平成29年2月23日(米国東部標準時間 午後2時)に公開されました。
【雑誌名】
PLOS Genetics
13(2):e1006606 (2017). 2月23日発刊
【論文名】
The intron in centromeric noncoding RNA facilitates RNAi-mediated formation of heterochromatin
【著者名】
Masatoshi Mutazono
1
, Misato Morita
1
, Chihiro Tsukahara
1
, Madoka Chinen
1
,
?
, Shiori Nishioka
1
, Tatsuhiro Yumikake
1
, Kohei Dohke
2
, Misuzu Sakamoto
1
,Takashi Ideue
1
, Jun-ichi Nakayama
3
,
4
, Kojiro Ishii
2
, and Tokio Tani
1
,*
【詳細】
プレスリリース本文
(PDF 399KB)
熊本大学大学院先端科学研究部(理学系) 生物科学分野
担当:谷 時雄
電話:096-342-3461
e-mail:ttani※sci.kumamoto-u.ac.jp
(メール送信の際は※を@に置き換えてください)