ジルコニアセラミックスは結晶構造の変化で壊れにくくなる
熊本大学産業ナノマテリアル研究所 川合伸明 准教授(現?防衛大学校所属)は、筑波大学生命環境系 興野純 准教授、日本学術振興会 髙木壮大 特別研究員らとともに、ジルコニアセラミックスの破壊過程のリアルタイム観察を行い、高靭化モデルを実証しました。
【概要説明】
ジルコニアセラミックス(ZrO2)は高い強度と粘り強さ(靭性)を併せ持つ材料として知られています。融点が高く耐熱性にも優れるので、歯科材料や医療器具、宝飾品や刃物などの日用品まで幅広く使われています。そして、ジルコニアセラミックスの靭性が高く壊れにくい理由は、外から力が加わった時に起きる結晶構造の変化にあると考えられています。
しかし、これまでの研究では、ジルコニアセラミックスが壊れていくときの結晶構造を直接観察することはできず、破壊の前後の状態の比較から、壊れるときにどのような変化が起きるのかを推測していました。特に、衝撃のような瞬間的に大きな力が加わってジルコニアセラミックスが壊れる際に、どのような時間スケールで結晶構造変化が起きているのかは明らかになっていませんでした。
本研究では、強いレーザー光をジルコニアセラミックスに照射して衝撃を与え、破壊が進展していく際の結晶構造の変化をリアルタイムで観察することに初めて成功しました。その結果、結晶構造の変化が破壊の瞬間に起きることを実証しました。具体的には、衝撃が加わってから壊れるまでの結晶構造を、X線を用いてナノ秒の時間スケールで時間分解観察することで、破壊が起きるところで結晶構造が変化している様子を実際に撮影することに成功しました。
材料の破壊時の動きについてより深く理解することは、より良い材料の開発に役立つことが期待されます。今後も実験、観察から材料の物性を解明していくことを目指します。
【論文情報】
論文名:Visualization of transformation toughening of zirconia ceramics during dynamic fracture
(ジルコニアセラミックスの動的破壊過程での変態強化機構の直接観察)
著者名:Sota Takagi, Nobuaki Kawai, Shunsuke Nozawa, Atsushi Kyono, Ryo Fukaya, Shin-ichi Adachi, Kouhei Ichiyanagi
雑誌名:Applied Physics Letters
doi:10.1063/5.0044607
【詳細】
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