"孫太郎虫"の親は花が好き!~奄美大島から「花粉食のモンヘビトンボ」を発見~
【ポイント】
- 一般に “水生昆虫” として知られるヘビトンボ類のなかに、成虫が花を訪れ花粉を食べる種がいることを、世界で初めて発見しました。
- 花を訪れた成虫が花粉媒介に寄与することを示唆する状況証拠も提示しました。
- 今回の発見をきっかけとして、謎の多い夜行性のヘビトンボ科成虫の暮らしぶりが今後、少しずつでも解明されていくことを期待します。
【概要説明】
熊本大学大学院先端科学研究部の杉浦直人准教授と玉川大学大学院農学研究科の宮崎智史准教授は、一般に “水生昆虫” として知られているヘビトンボ類のなかに、成虫が夜間に花を訪れ、花粉を摂食する種(アマミモンヘビトンボ)がいることを初めて明らかしました。また、本種がたんなる訪花者でなく、植物の相利共生者(花粉媒介者)であることを示唆する状況証拠も提示しました。これらの研究成果は謎につつまれているヘビトンボ科成虫の陸上での夜の暮らしぶり(食生活)の一端を明らかにするものです。本研究の成果は令和3年2月8日に日本昆虫学会誌「Entomological Science」にオンライン掲載されました。
【今後の展開等】
既存の知見から、奄美大島のイジュは昼間、主にアマミクマバチによって花粉が媒介される“ハチ媒花”と考えられますが、「複数年にわたってアマミモンヘビトンボ成虫に花粉付着が複数回認められたこと」「(グルーミング習性がないために)夜間に成虫の体表に付着した花粉が昼間もそのまま保たれていたこと」「訪花個体がイジュの雌しべを取りかこむ多数の雄しべの間に頭を突っ込んで採餌し、しかも位置/姿勢を変えながら何分間も花に滞在していたこと」を考えあわせると、アマミモンヘビトンボはたんなるイジュの訪花者でなく、(補助的ながらも)花粉媒介に寄与することが示唆されます。そのような “水生昆虫” の成虫が花粉媒介者として機能するという報告はほとんどなく、アマミモンヘビトンボが本当にイジュの花粉媒介者なのかを今後、解明することには意味があると考えられます。もしそれが実証できれば、水域と陸域の両生態系のつながりを明示する興味深い相利共生関係の事例となるでしょう。
【論文情報】
?論文名:Discovery of flower-visiting fishflies: Adult Neochauliodes amamioshimanus (Megaloptera: Corydalidae) nocturnally forages on Schima wallichii ssp. noronhae trees
?著者名:Naoto Sugiura and Satoshi Miyazaki
?雑誌名:Entomological Science
?doi:10.1111/ens.12463
【詳細】
?プレスリリース本文(986KB)
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