SARS-CoV-2オミクロン株による中和抗体回避と感染指向性の変化
【ポイント】
- 昨年末に南アフリカで出現した足彩胜负彩「オミクロン株(B.1.1.529, BA系統)」は、全世界に伝播し、現在のパンデミックの主たる原因変異株となりつつある。
- オミクロン株は、「デルタ株(B.1.617.2, AY系統)」と比較して、治療用抗体製剤やワクチンによって誘導された中和抗体から逃避する。
- オミクロン株は、ワクチンのブースター接種により誘導される中和抗体や、従来株やデルタ株に有効性を示す抗ウイルス薬によって感染が阻害された。
- オミクロン株は、デルタ株とは異なり、TMPRSS2依存性経路よりも、カテプシン依存性経路による細胞侵入を好み、感染指向性が変化している可能性が示唆された。
- 【概要説明】
ヒトレトロウイルス学共同研究センター熊本大学キャンパスの池田輝政准教授、上野貴将教授が参加し、東京大学医科学研究所 附属感染症国際研究センター システムウイルス学分野の佐藤准教授が主宰する研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan (G2P-Japan)」は英国の研究グループとの共同研究により、足彩胜负彩の「懸念される変異株(VOC:variant of concern)」である「オミクロン株(B.1.1.529, BA系統)」が、デルタ株と比較して、治療用抗体製剤やワクチンの2回接種によって誘導された中和抗体に対して抵抗性があることを明らかにしました。一方で、3回目のワクチン接種(ブースター接種)によりオミクロン株に対しても有効な中和抗体を誘導できること、治療薬として用いられている抗ウイルス薬がオミクロン株に対しても高い効果を示すことを明らかにしました。また、オミクロン株のスパイクタンパク質は、従来株やデルタ株と異なり、TMPRSS2依存性経路ではなく、カテプシン依存性経路による感染を好むことを明らかにしました。
本研究成果は2022年2月1日、英国科学雑誌「Nature」オンライン版で公開されました。
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【論文情報】
雑誌名:「Nature」2月1日オンライン版
論文タイトル:Altered TMPRSS2 usage by SARS-CoV-2 Omicron impacts tropism and fusogenicity
著者:Bo Meng#, Isabella A.T.M Ferreira#, Adam Abdullahi#, Niluka Goonawardane#, 齊藤暁#, 木村出海#, 山岨大智#, Pehuén Perera Gerba, Saman Fatihi, Surabhi Rathore, Samantha K Zepeda, Guido Papa, Steven A. Kemp,? 池田輝政, 豊田真子,? Toong Seng Tan, 倉持仁, 光永滋樹, 上野貴将, 白川康太郎, 高折晃史, Teresa Brevini, Donna L. Mallery, Oscar J. Charles, CITIID-NIHR BioResource COVID-19 Collaboration, The Genotype to Phenotype Japan (G2P-Japan) Consortium, Ecuador-COVID19 Consortium, John E Bowen, Anshu Joshi, Alexandra C. Walls, Laurelle Jackson, Sandile Cele, Darren Martin, Kenneth G.C. Smith, John Bradley, John A. G. Briggs, Jinwook Choi, Elo Madissoon, Kerstin Meyer, Petra Mlcochova, Lourdes Ceron-Gutierrez, Rainer Doffinger, Sarah Teichmann, Matteo Pizzuto, Anna de Marco, Davide Corti, Alex Sigal, Leo James, David Veesler, Myra Hosmillo, Joo Hyeon Lee, Fotios Sampaziotis, Ian G Goodfellow, Nicholas J. Matheson, Lipi Thukral, 佐藤佳*, Ravindra K. Gupta*
(#Equal contribution; *Corresponding author)
DOI: 10.1038/s41586-022-04474-x
URL:?https://www.nature.com/articles/s41586-022-04474-x
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【詳細】 プレスリリース(PDF440B)