“地域×スポーツ”で新たな未来を切り開け!
地域スポーツの振興を目指して
健児くん(以下:◆):先生の専門は「スポーツ経営学」ですね。
中川:一般的にスポーツといえば、“観るもの”だったり、“勝ち負けや順位を競うもの”という印象を持つ人も多いでしょう。でも、もともとは“誰もが楽しめるもの”であり、“体を動かす”こと自体を楽しむもの。誰もが楽しめるスポーツを生活の中にもっと浸透させて、豊かな生活を送ってもらう。それを教育の場だけでなく企業や団体がビジネスとして取り組み、継続的?効果的に社会に浸透できるような仕組みや環境について考えていくのが「スポーツ経営学」ですね。
これまで地域で行われるスポーツ事業といえば、ボランティア団体や行政主導のものが多数で開催数も少なく、主催者やインストラクターの負担も少なくはなかったと言えます。また、市民の方々にとってもスポーツを体験できる機会が定期的に設けられることは、健康への意識向上にも繋がります。私自身もここ10年ほど、研究だけでなく実際に社会に研究成果を還元していく段階にきていると感じていました。
体を思い通りに動かせない高齢者の方、まだ競技スポーツに専門的に取り組むには早い年齢の子どもたちにも楽しめる競技の内容があることを知ってもらい、生活にスポーツをプラスすることで、日常生活に楽しみが生まれたり、体が少しずつ動くようになったり。忙しい毎日の中でもスポーツで笑顔になる時間を少しでも増していきたい、という思いの下、地域スポーツの振興を目指して、これまで市町村のスポーツマーケティング調査や総合型地域スポーツクラブへのコンサルティングなどさまざまな活動を行ってきました。そういった経験や思いの中で生まれた一つの考えがNPO法人の設立でした。
地域に根差した指導者を育てる
◆:先生が中心となり2008年に設立した「 NPO法人 ひとづくりくまもとネット 」ですね。立ち上げのきっかけとなったのは?
中川:1997年に熊大教育学部に生涯スポーツ福祉課程を設立した当時から感じていたことは、教育学部でスポーツを専門的に学ぶ者にとって教師の道以外の進路をなかなか見つけにくいということ。学生が専門家として社会でより広く活躍できる場を生み出さなければならないという思いがありました。
また、少子高齢化が進み、認知障害や孤独死が問題になっている今こそ、地域に専門知識を持ったスポーツ指導者を輩出し、生涯学習としてのスポーツの普及に努めなければと感じていました。NPO法人を立ち上げ、スポーツおよび社会教育施設を運営しながら地域に根付いたスポーツ振興を行うことで、これらの課題を解決していきたいという思いでしたね。
◆:これまでの活動内容は?
中川:指定管理者として、「あしきた青少年の家」など県内外12の社会教育施設等の管理運営。それらの施設を拠点とした地域住民へのスポーツ指導や体験学習、健康プログラムの提供などの「生活スポーツ事業」や「健康づくり事業」。若者の雇用創出や社会貢献を目的とした「社会教育事業」などを行っています。
現在、施設の管理運営やインストラクターなどおよそ80名の雇用を創出し ており、その多くが、生涯スポーツ福祉課程の卒業生や県内外でスポーツ経営学を学んだ若者です。
教員以外の道もあるのではないかと悩む学生に一つの道を提供できたことはとても嬉しいですし、楽しそうに地域で働く彼らを見て今後のやりがいにも繋がっていますね。
最初に足跡を残す人になれ
◆:人気の体験学習やプログラムは何ですか?
中川:熊大陸上部の部員たちが指導者として参加する「子ども陸上教室」ですね。歩く?走るといった移動能力を小さい頃にきちんと養っておくことは、どんなスポーツにも応用できるだけでなく、健康的な未来を作る準備でもあります。陸上というとどうしても「早く走ること」に考えが行きがちですが、ここで教えるのは「体を動かす楽しさ」。楽しみながら体の動かし方を覚えていくと、結果的に将来足が早くなったり、けがをしにくい体を作ることができます。子どもたちが楽しそうに走ってる姿を見て、将来どんなスポーツで活躍するんだろうな~と考えるだけでわくわくしますね。
◆:研究の傍らでさまざまな活動を行う先生が目指す次なる目標とは?
中川:今、私は若者に“働くフィールド”を提供し、地域に根差す人材を育成しているところです。しかし、次は自らその場所を作りだす勇気を持った若者を育てていかなければならないと感じています。ボランティアやインターンとして学生たちに生涯学習指導を体験させ、地域の人と交流する中で、自らその地域の問題点や課題を見抜く力を身に付けさせているところです。学生にいつも掛けている言葉があります。それは、「真っさらな雪の上に最初に足跡を残す人になれ。きれいな草原の中に一本の道を作れる人になれ」。地域に暮らす人やそこのニーズによってそれぞれ違う足跡を残していける若者を一人でも多く育て、輩出していくことが今の私の使命ですね。
◆:道を切り開いていく勇気…!未来を担う地域の指導者に期待です!
(2013年6月21日掲載)
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