新年のご挨拶

熊本大学長 崎元達郎 皆様、明けましておめでとうございます。年末年始をいかがお過ごしだったでしょうか。

御家族、御親戚と共に過ごされ、新たな年に向かう鋭気を充分に養われたことと存じます。

今年は丑年、スローとマイペースがキーワードの様ですが、世の中は大変厳しい経済危機に向かいつつあり、それほどゆったりしておれる状況ではなさそうです。

この経済危機の直接の原因は、米国のサブプライム問題でありますが、その遠因はアメリカが先導し、世界が追従した市場主義の行き過ぎであります。また、サッチャー、レーガン、小泉政権がそれぞれの政策基礎とした新自由主義の行き過ぎの結果とも言えます。

この新自由主義による市場原理導入の行き過ぎは、日本、米国、英国等の医療、福祉、教育において歪みを生じさせてきました。日本における高等教育の現状においても、国立大学の法人化における公財政支出削減が、日本の将来を危うくする危険をはらんでいることも明瞭になってきています。

ところで、新自由主義の正反対の極みは、社会共産主義になろうかと思いますが、競争無く、富を平等に配分する社会も、歴史的には実現が難しいことが証明されつつあり、人間の心の在り方からして、多くの人々を満足させるものではありません。

医療、福祉、教育における過度な市場原理の導入には、修正を加えるべく主張を繰り返す必要がありますが、一方で、有限な資源や財力の下では、必要なものを選択?集中して、最大多数の幸福を得る道を模索する必要がありますので、競争や選択と集中を否定することもできません。

国立大学の中でも、熊本大学が選択と集中を受け、熊本大学の中でも、その目的に沿って努力し成果を挙げる部局や教職員が選択と集中を受けるのは、その組織の活性化と使命の達成の為には必要なことであります。私自身もそう考え、必要な施策を実施してきました。

国立大学においては、市場原理や経営になじまない教育、基礎研究や附属病院機能を守るのは当然のことであること等を考え合わせると、問題は、選択と集中を行うための評価の在り方や考え方であると結論づけることもできます。

熊本大学もあと3ヶ月を残す平成20年度内には、法人化後の活動の評価を受け、その評価を受けとめた形で次期中期目標計画を建てねばなりません。

熊本大学が評価を受け、選択されるためには、熊本地域に貢献するだけのregional center としてだけでは不充分で、地域を九州、アジアに広げて、熊本におけるNational center としての機能を高め、国としての国際競争力の確保、国土の均衡ある発展、高等教育の機会均等の保証等における存在感を示す必要があります。

熊本大学は法人化後の約5年間、Kumamoto University for youのミッションステートメントの下に、Upgradeな教育と人材養成、Uniqueな研究、地域とのUnion、Universalな貢献の中に、「地域に根ざし、国際的に存在感を示す大学」を目指して、確固たる実績を毎年、毎年積み上げてきました。

その成果は、それぞれの学部、研究科の改組と、29件の教育GPの獲得、大学院先導機構による拠点研究の推進と、2件の21世紀COE、3件のグローバルCOEの獲得、感染症、有明海、マグネシウム合金等の研究推進、地域再生事業、みなまた環境マイスター事業、男女共同参画と女性研究者支援事業、海外における熊本大学フォーラムの実施と学術国際ネットワークの構築等、枚挙にいとまがありません。

さらに、今後は、国際化、国際競争力が最重要課題になることが必定であることから、この1月1日に留学生センターを発展的に改組した国際化推進センターを中核組織とする国際化推進機構をスタートさせました。これに関連して、国際化推進の基盤整備のための予算約1億円を次年度予算として内示を受けたことは昨年末に報告したとおりであります。

次期中期目標計画期間における熊本大学の発展を約束する施設整備についても目覚ましい進捗を示しています。発生研、病院中央診療棟、医学部図書講義棟の完成と、工学部?理学部各棟の改修、保健学科、薬学部本館、附属小学校?中学校、旧工学部3号館、大江渡鹿体育館の改修等に続き、20年度補正予算又は21年度予算では、病院東病棟(3/3期)、文学部?法学部棟及び教育学部棟本館の改修(2/3期)、教育学部東教室改修、工学部水理実験棟改修等が採択されています。

また、独力又はその他の財源による施策整備としては、本荘中地区の共用研究棟の新築、こばと保育園の新築、黒髪南地区食堂の新築、留学生宿舎の新築、育薬フロンティアセンター棟の新築等が着工済み又は着工予定で、一部は今年度内に完成いたします。

これまでの、これらの教育?研究?社会貢献?国際連携、そして、学内環境整備の諸活動は、教員、コメディカル、技術職員の懸命な努力に加え、西山理事?副学長と学務部、阪口理事?副学長と研究国際部、菅原理事副学長と企画部、学術情報部、倉津副学長と附属病院事務部、森理事と総務部、山本理事と財務部、施設部の各職員の皆さん一人一人がそれぞれの立場でその職責を果たすことで成し遂げられたものであります。こころから感謝いたしますと共に、誇りとする所であります。

平成20年までのこれらの実績の上に、今年、平成21年?2009年の実績を構成員の総力で積み上げて、「グローバルなアカデミックハブ」熊本大学の輝かしい未来を築く、新しいさらなる一歩を皆さんと共に、また、谷口新学長候補と共に踏み出したいと思います。

「怠ける者は不平を語る、努力する者は夢を語る」という言葉があります。熊本大学は夢を語れる組織であり続けなければなりません。皆様のさらなる御努力と知恵を期待します。

終わりに、今年1年の皆様の御健康と御活躍を祈念しまして年頭の挨拶といたします。


国立大学法人熊本大学長
崎元達郎



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